HEAVEN's DOOR
1
「え?転校生が来るって?」
「だってさ!めっずらしいよな〜〜!
この間MVP取った伊藤以来じゃねえか?」
その日、ベルリバティ学園では新たな転校生の話題で持ちきりだった。
以前も時期はずれの転校生が来たことで騒然となり、
その後副理事から退学勧告を受けたりといろいろと騒動があったものだが。
今回は騒動になると分かっているわけでもないが、
二人もの時期はずれの転入生というのは、この学園にはほとんどないものだった。
そのため、話題になるのは当然とも言えた。
さて、一人めの転校生である伊藤啓太は、例に漏れず同級生・・・で理事長の遠藤和希とこの話題を出していた。
「え?今回の転校生の話、和希なにも聞いてないのか?」
啓太は、以前自分が和希(理事長)によって自分がこの学園に入ったように、
今回の転入生も和希の一存が入っているのだと思っていた。
しかし。
「いや、今回は違うんだ。
オレの…叔父さんにあたる人なんだけど、その人がその子の入学を勧めたんだ。
能力はいろいろと申し分ないみたいだったし。。
叔父さん自身もすごく信じられる人だから、問題はないと思って許可したんだ。」
和希は笑いながらそう言った。
その口調から、本当にその叔父と言う人を信頼しているのがわかる。
啓太は、和希がそういうなら間違い無いんだろうな、と納得して。
「で?いつ来るの?その子!」
新しい仲間を楽しみに待つことにした。
##############
「北野冬紀(ふゆき)です。よろしく。」
数日後、噂の転入生が来た。
(うわ、何か真面目そう…)
それが啓太の転入生に対する第一印象だった。
肩まであるだろう薄茶色の髪を首筋で優雅にまとめ。
一見すると少女のようにか細い小柄な体は堂々とした姿勢を保ち。
青い瞳をシルバーフレームの眼鏡が覆って。
固い印象を見せるが、非常に整った、つまり美しい顔立ちをしていた。
(っていうか女王様…もとい西園寺さんに負けないかも…。)
啓太は、BL学園一の美貌を誇る会計部長を思い浮かべた。
彼も女性のような美しさと凛とした態度で、周りを圧倒させたが。
目の前に居る彼は最初に真面目な印象を受けるも、確たる美貌を持っていた。
「じゃあ君は…伊藤くんの隣だね。」
教師である海野が勧め。
「あ、ここです。」
啓太は席を立ち、転入生を迎えた。
「はい。わかりました。」
転入生・・・北野は、あまり表情を変えず。
啓太の傍に来た。
「あ、あのよろしくね。北野くん。
オレ伊藤啓太。」
すると、北野は啓太のほうを向いて。
柔らかく微笑んだ。
「伊藤くん…だね。初めまして。」
その微笑みは、固い印象を一掃するほど。
やさしかった。
##############
「け〜いた、転入生くんと仲良くやってるみたいだな。」
「あ、和希!」
休み時間になり、北野と仲良く話をしていた啓太は、
(会議で)遅刻してきた和希に少々恨みがましく言葉をかけられた。
「伊藤くん、彼は?」
「あ、ああごめん北野。こいつは遠藤和希。
面倒見いい奴だよ。オレの親友!」
「(それはほぼ啓太にだけだけど〜〜)そんな、買いかぶりすぎだって。
よろしく。北野…くん?」
「北野冬紀だよ。よろしく。遠藤くん。」」
先程と同様、好意に満ちた微笑で和希に手を差し出した。
和希は少し驚いて、だがすぐに笑うと差し出された手を握り返した。
「オレの事は和希でいいよ。」
「そう?じゃあ和希と呼ばせてもらうよ。僕の事も冬紀って呼んで欲しいな。。
伊藤くんもそう呼んでくれるかな?」
「あ、じゃあオレの事も啓太って呼んでいいよ!」
「あは、ありがとう。」
そんなわけで、あっさりと仲良しになってしまった。
啓太は、北野…冬紀の印象が話してみると全く違う事に少し驚いていた。
(やっぱり人って話してみなきゃわからないなあ。)
第一印象だけで冬紀を固いタイプだと決めかけていた自分を、反省した。
「さて、じゃあ冬紀。学校案内しようか?」
「本当?ありがとう。誰に頼もうかと思ってたんだ。」
「あはは、和希はオレの時もやってくれたもんな。」
「オレの時?ああ、じゃあ啓太も転校生?」
「うん。」
「そっか…。」
冬紀は一瞬だけ考えたような表情になる。
だが次の瞬間には、先程の笑顔に戻っていた。
「じゃあ、転校生同士のよしみで仲良くしようねv」
「あ、うん!!」
「おーい、オレ一人仲間はずれかい?」
後ろから響く声にふりむくと。
やっぱり恨みがましそうな和希の顔があった。
To be Continued…